2026年5月6日水曜日

Sacrifice


In life, unlike chess, the game continues after checkmate
人生はチェスとは違い、チェックメイトの後もゲームは続く。


というわけで、3年ぶりです。生きてます。
SNSやショート動画によって、文章力の低下を顕著に感じている今日この頃。
3年ぶりにまとまった時間が取れたため、「ふゆから、くるる。」という作品を遊びました。

四季シリーズと呼ばれており、同シリーズの「はるまで、くるる。」「なつくもゆるる」は発売当時に読了済です(内容はうろ覚えですが・・・)

■当時の感想
はるから、くるる。
なつくもゆるる

非常に難しく感じましたが、ある程度読み込んだことで自分なりに解釈することができたので、感想を書いておこうと思います。

あらすじと全体的な感想

あらすじ

外部と隔離された全寮制の学園。

──そこで生活するのは不死の少女達。

彼女らは大人になると同じ時間をかけて赤ん坊になるまで幼くなり、再び大人になるまで成長し再び幼くなる、というサイクルを繰り返している。

学園からの卒業条件はただ一つ。
外部で観察している何者かから天才だと判断されること。
その判断が下された瞬間、少女は卒業を認められて学園から姿を消すことになるのだ。

不死の少女達の平穏な学園生活は、とある殺人事件によって大きく狂い始める。

なぜ少女達は不死なの?
どうして成長したり幼化したりするの?
学園に閉じ込められてどのくらいの時間が経過したの?
どうして首を切断されても生き返ることができるの?
天才になれなかった少女はどうなるの?
外の世界はどうなっているの?
少女しかいない理由は?
男はどこにいるの?
死ぬって何?
生きるって何?
命ってなに?
なんのために、命、ってあるの?

──事件の鍵となるのは針。

とじ針。棒針。ミシン針。
絹針。つむぎ針。がす針。
ふとん針。洋服針。釣り針。
待針。Tピン。革三角針。

針に導かれて、不死の少女達が死んでいく。

(公式HPから抜粋)

思い出補正も入ってしまいますが、「はるまで、くるる。」の方が、ゲーム体験として終盤の畳みかけや感動が大きく、クリア直後の評価としては上に感じました。
また、ここ数年は解釈が比較的容易な作品に多く触れていたこともあり、クリア時点では内容の理解が不十分でした。

しかし、考察記事を読んだり、気になった部分を何度も読み込んだ結果、伝えたいメッセージや作品のテーマとしてはこちらの方が好みだなと感じました。
ライターの渡辺僚一さんは、未来への希望を感じさせる文章を書くのが非常に巧みだと思っているのですが、本作品では特に前向きな気持ちになれました。

総合すると、「万人受けする名作ではないが、宗教や死生観など本作品独特の要素が好みな人からすると怪作と成り得る」といった印象です。

詳細な感想については、ネタバレを含むので追記にて。






18禁美少女ゲームであることの意味

まず、他の四季シリーズもそうですが、美少女ゲームにおけるテンプレ要素に対し、シナリオ的な意味を持たせているところがとても好きです。

「はるまで、くるる。」では、「ハーレム構造」に意味があり、
「なつくもゆるる」では、「ロリキャラ」に意味がありました。

「ふゆから、くるる。」においては、「性行為」に意味を持たせています。

一般的に、18禁美少女ゲームにおける性行為は登場人物同士が快楽を得ること(および、プレイヤーに性的興奮を与えること)が主目的となっており、本来の目的である「生殖」を意識する機会はあまり無い構造になっています。

そこに、生殖による意識の創生=群れの維持という明確な意味を持たせることで、18禁であることを最大限生かしたシナリオになっているところがとても良かったです。

快楽が主目的ではない、本来の意味での性行為をプレイヤーに意識させたうえで該当シーンに移行することで、日本書紀における国生みのように、根源的な神秘性をも感じることができるという不思議な体験でした。

本作品のテーマ

人によって感じるところは違うとは思いますが、自分としては、


「生きとし生ける人間は必ず死を迎えてしまうが、新たな意識によって想いは引き継がれ、世界は続いていく」

というのがテーマではないかと解釈しました。

「生きるとは何か?」という根源的な問いに対し、作者なりの明確な回答を出している点は、本作品を遊んで良かったと強く感じるポイントでした。

「個人としての死」という観点を扱った作品は多く存在していますが、「個人としては死を迎えるが、想いは継承され、群れとして新たな未来へと進むことができる」という、とても広い視点での死生観を扱った作品はこれまであまり出会ったことがなく、非常に印象深かったです。

また、私自身が宗教三世であるが故に、「祈り」という行為には懐疑的でしたが、本作品を読んだことで肯定的に考えるきっかけとなりました。

「祈り」自体は無意味な行為であると定義しつつも、「幸せでありますように」と掛け値なく願うことの大切さを考えさせられました。


微妙だと感じたポイント

あまり評価できないなと感じた点としては、
作中でも言及されていましたがミステリーの種明かし部分が雑に感じたことと、カタルシスが弱く感じたことです。

とはいえ、カタルシスの部分に関しては、
・順番に四季シリーズをすべて遊んでいて、各シリーズの構成やテーマ性を理解しきれているわけではない
・仏教、文学、その他教養について知識が浅い

という部分は否めませんので、読み手側の事情とも言えますが・・・。
(シン・エヴァンゲリオンのように「シリーズが終わる」という体験込みの良さもあるかもしれないですね。)

また、本作品は他シリーズとの明示的な繋がりが提示されないまま完結をしましたが、
個人的には、

「人類の存続が困難になったとき、残された人間たちは地下と宇宙にそれぞれ逃避することで、新たな可能性を求めた。地下に逃げたのは『はるまで、くるる。』の世界で、宇宙に逃げたのは『ふゆから、くるる。』の世界だった。」

といったように、作品毎の繋がりがあると非常に良かったなと感じてしまいましたね。

(今回感想を書くにあたり「はるまで、くるる。」の小説版を読みましたが、地下と宇宙の描写があったような気がするので、構想はしていたのかも?とはいえ制作会社も変わってしまったようですし、大人の事情で難しかったのかもしれないですね・・・)


最後に

プレイしていて心に残ったシーンは、他にも挙げている方が多くいたかもしれませんが「チェックワンツー」「蔦凪島との別れ」「祈りのチェス」ですね。

チェックワンツーは、初見時は完全にCROSS†CHANNELが頭によぎりましたが、終盤で繋がりが判明してとても感動しました。

蔦凪島との別れは、このエピソードがあったことで、月角島ヴィカというキャラの深みが増しており、とても良かったです。

祈りのチェスは、本作品の肝であると言っても良いシーンだと感じました。
自分たちがいつか終わることを自覚している中、"幸せでありますように"と祈るために、チェスという終わってしまったゲームを打つ。
死に対する向き合い方として、祈りという答えに着地するのはとても好きでした。

また、声優さんの演技もとても良く、一気に作中世界に引き込まれました。
特に「世界の真相を語る月角島に対し、空丘夕陽の暴力性が強くなっていく」というシーンでは、声色や間の使い方の違いで男性性を見事に表現しており、思わずボイスを聞きなおしてしまいました。

ミステリー・仏教・人間原理・SFなど多数の要素を融合している、エロゲならではの尖った作品でした。感謝。



生命とは、意識である。
意識とは、幸せへの祈りである。
祈りとは、純然たる想いを表現する行為である。
誕生した時点で辛い旅路が確定している、不幸な意識。
だからこそ、祈る。
――「幸せでありますように」


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