2023年4月30日日曜日

DEAR FUTURE



『きっと何者にもなれないお前達に告げる』

というわけで、とっても久しぶりです。生きてます。

以前視聴した事がある『輪るピングドラム』というアニメを再度見直した所、非常に理解が深まり一気に没入したので、自分なりの解釈などを記していければと思います。

透明な存在、親に選ばれない子供、キリスト教、加害者家族と被害者家族、運命、などなど…
様々な要素が輪のようにぐるぐると密接に絡み合って出来ている為、知れば知るほど深みにはまりそうです。

本当は一つ一つの要素でそれぞれ記事を書きたいくらいには好きな作品なのですが、まずは総評としてまとめたいと思います。

また、もう10年以上前の作品にはなりますがネタバレも込みで書いていこうと思うので、念のため追記機能を使う事にします。











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・「愛の話なんだよ、何でわかんないかなぁ?」

この台詞は1話で子供たちが銀河鉄道の夜について考察している時に発していた台詞ですが、複雑なこの作品について端的に語るならこの一言が1番かなと思いました。

本作品は取り巻く要素がかなり数多くあり、見る人によって深く感じた部分が異なってくるかと思います。
自分にとっては、「透明な存在」、「自己犠牲」、「宗教2世」、「機能不全家族」などに着目して楽しんでいました。


・透明な存在

神戸児童連続殺傷事件
作中で「透明な存在」のワードが出てきており、モチーフの一つになってる事件です。また自分の出身が兵庫な為自然と調べた思い出があります。
詳細や自分の思う所などを記載すると、それだけでひと記事丸々埋まりそうなので割愛しますが、「親から愛されず、アイデンティティが確立できず何者にもなれなかった子供」ですかね。

・こどもブロイラー
初見の時は実際に作中に存在する施設かとばかり思っていました。

しかし見返してみるとモチーフだろうと結論づけました。

親のエゴで子供の存在を殺し親の都合のいいように操っている人たちや、個性を均一化し自我を殺す国の教育システムそのものなどを表しているのかと。

親に「選ばれなかった」=愛を注いでもらえず「透明になった」子供が行き着く場所、なのかなと。


・機能不全家族と疑似家族が育む愛

登場人物が育った家庭は、愛情が不足している家庭ばかりです。

私自身もいわゆる機能不全家族
として育ち、また母親が宗教にかなりのめり込んでおりほぼネグレクト状態だったという境遇もあり、特にしょうまにかなり感情移入してしまいました。

幼少期の親からの愛情が無いと、人は透明になってしまいます。
家族に愛されていない透明な存在(愛に飢えた子供)は愛の証である林檎を持っていない。
ひいては自我が確立されていない存在であり、不確定な地盤のまま歩いているような朧げな存在です。
そして、朧げな存在である若者を集め現実のオウム真理教はあのような凄惨な事件を起こしました。
そんな存在である私のような人間が真っ当に生きるには、無償の愛を分け与えることができる相手とピングドラムを回す事が不可欠なんでしょうね。

・宗教2世

作中での組織は「宗教組織」とは明確にされてなかったものの、明らかにオウム真理教を意識されていますね。

元々サリン事件やオウム真理教の教義、主犯である麻原の生い立ちから国家転覆を狙うに至った経緯などについて興味がありいろいろと書籍等は読み漁っていましたが、本記事では流石に割愛しようと思います。


また、引用元である銀河鉄道の夜と同様に、キリスト教や三位一体の概念などを扱ってるのではと感じました。



・箱とシュレディンガーの猫
2010年代のオタクが大好きなシュレディンガーの猫、本作品にもありました。(初回は気づかなかった…)(2012年の私も例に漏れず嬉々としてシュレディンガーの猫についての記事を書いていました...。)
不確定な観測結果を変え運命の書き換えを行う・・・量子力学論からの考察もできそうなのでまた見返すかもしれません。深い作品。

 


・ピングドラムとは何なのか?


明確な答えが提示されていないので、見る人によって解釈が変わってくるかと思います。自分は、『自己犠牲も厭わないほどの無償の愛を相手に分け与える気持ち』こそがピングドラムで、モノとしてのモチーフがリンゴである、と受け取りました。また、キリスト教義で言うなら林檎=原罪とも取れますね。

禁断の林檎を食べた人類にとって生きる事は罰であり、生きている限り「運命」という理不尽な概念に人は襲われ続ける。

無償の愛である"ピングドラム"を分け与える「愛の循環」により人は「生存戦略」を行い、「透明な存在」からの脱却を目指す。


「運命の果実」を一緒に食べ、人から人へ、受け渡し、分かち合う。

生まれた時点で罰という名の理不尽な運命を背負った子。

親の一方的な押し付けにより「透明になった」子。

救うのは前世代の運命。

襲うのは前世代の怨念。


そして、運命の至る場所へ。

――――「生存戦略、しましょうか。」

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